田中康夫の嘆き

 連休明け17日付「日本経済新聞」大阪本社版には、前日に代々木公園で開催の「さようなら原発10万人集会」に関する記事が、1行も掲載されませんでした。東京本社版でも僅か19行のベタ記事扱いです。

 日本で発行される新聞の中で最も紙面数が多い媒体は敢あえて、「無視」を決め込んだのです。と記すや、マザーズやジャスダックも含めて3000社を優に超える、有象無象の上場企業の決算状況を子細漏らさず報じる同紙幹部は、うそぶくかも知れません。デモ行為は「経済」行為に非ず、と。
 呵々(かか)。「社会」なくして「経済」は存在し得ません。
(略)
 10万を超える国民が自らの意志で炎天下に集ったのです。その代々木公園に隣接する日本放送協会は総合テレビで、「ノーベル賞作家の大江健三郎さんやルポライターの鎌田慧さんなどが呼び掛け人となって」、「主催者側の発表でおよそ17万人、警視庁に拠りますとおよそ7万5000人」が「運転再開の撤回や原発の廃炉を訴えました」と紹介しました。
 未だ律義にNHKニュースを信奉し続ける、メールやツイッターとは無縁な善男善女は、以下の事実を知る由も無いのです。

 同じく「呼び掛け人」で「アカデミー賞音楽家の坂本龍一さん」が「子供を守りましょう。日本の国土を守りましょう」と、「齢九十歳なれどかくしやくたる作家の瀬戸内寂聴さん」が「冥土の土産に皆さんの姿を見たかった」と挨拶した光景を。
「労働組合や団体による動員に加えて、インターネットでの呼び掛けに応じて集まった人が大勢居た為に参加者が多くなったと見られています」とも伝えたN(何も)H(報じない)K(協会)の「隠喩」は、極めて戦略的です。直截に申し上げれば、一部の左ひだり巻まきな文化人や団体と、その言説に感化されたネット族の集会という矮小化した印象への被爆誘導です。(略)
(18日発売 日刊ゲンダイ 田中康夫氏コラム「ニッポン改国」より)

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