梁塵日記

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zoom RSS 東京芸術座アトリエ第40回公演「おんやりょう」

<<   作成日時 : 2017/04/10 15:57   >>

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14時、上井草の東京芸術座アトリエでアトリエ第40回公演「おんやりょう」。掛け値なしの傑作だった。

 作・演出は演劇集団円の内藤裕子。ウエルメイドという褒め言葉がこれほど似合う舞台もない。

 舞台はとある地方の消防署。山西司令(救命士・隊長=神谷信弘)と上野司令(第一中隊長=綾瀬龍洋)がのんびりと農業談義。
 消防団は基本的にボランティアなので農家が多いとか。だからというわけでもないが、署員である2人も農家育ち。今年の田植えはいつやるか、そのために農繁期の休暇をどう取ろうか、故障続きの古い農機具を新調すべきかなどたわいもない世間話。もちろん、常に本部通信指令室から緊急出動要請が下りてくる。
 中には緊急性のない「119番常連」もいるが、出動要請があれば駆けつけざるを得ない。そのため署員から不平も出る。出動イコール搬送とは限らないのだ。

 現場にかけつける消防隊員の中でも救命を第一義とする救命士と一般消防士の間の反目・軋轢がある。交通事故の負傷者を搬送する際、救命士が負傷者の状態を確認する前に消防士が負傷者を動かし、搬出したことから吉川司令補(救命士=脇秀平)の怒りが爆発する。迅速な処置を主張する多田士長(松並俊祐)との反目。

 救命士は救急隊員として5年、若しくは救急活動に2000時間以上従事する実績がないと救命士の受験資格はない。山西は細居消防士(機関員=中新井美穂)に救命士になるよう勧めている。

 そんな署内の微妙な対抗意識を軸に、井口副士長(小川拓郎)と佐伯副士長(江部茜)の秘められた結婚問題や、かつて自分の父親の救急搬送での山西の処置の正否にわだかまりを持つ多田士長の葛藤などさまざまな人間模様が織り込まれる。
 その展開がテンポもよく進み、一瞬ともダレる所がない。

 東京芸術座は最近見始めたので知ってる役者はほとんどいないのだが、実に魅力的で個性的な若手がそろっている。

 生真面目な吉川司令補を演じた脇秀平の落ち着いた演技。まるで小劇場の人気個性派のような七尾士長役の森路敏のくせのある柔軟な芝居。こういう女性隊員いるいると思わせる中新井美穂のゴムまりのように弾む躍動感ある芝居。市長の親戚というコネで入ったらしい三浦消防士(横沢勲生)のとぼけた演技。そしてベテラン、崎田和子と小林邦明(イムパンミョン)の存在感。元消防団員で認知症を患い、町を徘徊する小林のエピソードがもの悲しい。彼が歌う木遣唄の掛け声がタイトルの「おんやりょう」。
 これほど登場人物一人ひとりが愛おしく思える舞台もない。

 結婚・恋愛問題もグレイのまま終わらせたのがいい。井口と吉川の間で揺れる佐伯の心。あの三人の関係はどうなるのか…と見終えた後も尾を引いてしまった。
 登場人物それぞれの心の痛みや矛盾・葛藤を、笑いをまぶして描く哀歓ないまぜのヒューマン・コメディー。星五つつけたいくらい。

 消防署の話では三田村周三と椎名町オフィスの「分署物語」シリーズがあったが、内藤裕子のこの作品も消防ものとして出色。この作品はシリーズ化してほしいものだ。
 終演後、神谷さん、内藤さんと立話。神谷さんは役柄同様に温厚実直な方。内藤さんは「グリーン・フラワーズ」という別ユニットを主宰、次回は9月公演とのこと。

 帰り、近所にあるいわさきちひろ記念館に行ったら月曜休館だった。残念。公演は16日まで。

 下北沢に移動し、ディスクユニオンの隣りの古書店で麿赤兒著「怪男児麿赤兒がゆく」を古書店で買う。出版された時に買いそびれたのだ。

帰りの電車で読んだが、文章がメチャメチャうまいし、まあ痛快なこと。唐十郎、寺山修司、土方巽の項はもとより、戦死した父親の恩人だったという三上卓に会いに行くくだりはもう読ませる読ませる。自叙伝、エッセイのお手本ともいうべき文章のリズム。ただならぬ文才だ。

三上卓は五・一五事件、戦後のクーデター事件「三無事件」に関与した元海軍中尉。麿の父親が軍法会議にかけられそうになった時、庇ってくれたという。しかし、父親の軍規違反が何だったのかを知って麿はひっくり返る。
「君の父は上海から大連に行軍する途中、好いた女に会うために上海に舞い戻ったのだ」

顔色一つ変えずに答える三上卓。
この時の麿の胸中やいかに。

麿が描写する三上卓の声の生々しさ。さすがの麿も太刀打ちできない威容。「虚実会見記」とタイトルしてるが、この辺りはもはや歴史の生き証人と化している。

寺山修司が状況劇場に贈った葬儀の花輪について、最初はまったく理解できなかった麿が、次第に意味解読を深めていく様子も読ませる。自叙伝の名作だな、この本は。
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