浅川マキさんの写真

 命日でもないのになぜか浅川マキさんのことが頭から離れない。

 一枚の写真が見つからないのが気がかりだからかもしれない。

 マキさんのマンションに行ったのは一度だけ。98年5月にマキさんからのお誘いで麻布のマンションを訪問したのだ。

 場所が分かりづらく、電話したら「ピーコックの前」だという。
 ようやくたどり着くと、黒のシックなスーツとミニスカートのマキさんが出迎えてくれた。

「そのままでいわよ」

 土足のままのアメリカンスタイルのお部屋。きれいに片付き、おしゃれ感ある部屋。

 壁にはソニー・クラークの「クール・ストラッティン」のパネル。
「家にいる時はあまり音楽は聴かないの」
 ビデオデッキには「メジャーリーグ」のテープ。中学時代、ソフトボールの選手だったマキさんの野球好きは年季が入っている。

「何を用意していいかわからないのでピーコックの店員に聞いたら、『ビール飲む人ならこれがいいですよ』と言われたので用意してみたの」
 ツマミのおかきやチーズがテーブルの上にある。「甘いものがほしかったらこれも」とお饅頭やバナナまで。 

 何を話したか忘れたが、マキさんと話していると時間の経過がわからなくなる。
 時計を見ると21時。7時間も話していたのか。
 そろそろ帰ろうと思い、「写真いいですか」と言うと、「じゃあ、サングラスを替えようかな」と鏡の前で二種類のサングラスを交互にかけて比べている。「こんなミニスカート姿で…」と言いながら嬉しそうにポーズを取ったりする。
 
 そのうち自分のカメラを持ち出してきて、「私も撮ってあげる」と私に向けてパチリ。
「お互いのカメラのフラッシュが同時に光ったらどうなるのかしら」などとたわいもないことを言うマキさん。
 そんなことをしてるうちに帰りは22時過ぎになっていた。
 その時にマキさんが撮ってくれた写真を後日送ってくれたのだが、その写真をどこにしまったか、アルバムに貼ったのか、記憶がすっぽり抜け落ちている。

「わたしの手許に好きなのを残しました」と手紙にあるから、私に送ってくれた写真は「二番目にいい」写真ということだろう。今となってはその写真がどんな写真だったか知る由もない。

 07年にもらった手紙の中に、
「先立った者の安らぎが後に続く者の不安を鎮めることはない」
 という、最近見たという映画のセリフが書いてあった。その映画が何で、どんな意味だったのかも今となっては聞くことができない。
 

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