エル・トポ

きょうの1本はアレハンドロ・ホドロフスキー監督の「エル・トポ」(1970)

 子連れで黒装束のガンマン、エル・トポがたどり着いた村。山賊の襲撃による大虐殺があり、血の海と死屍累々。

 彼は修道院に陣取る「大佐」とその手下5人を倒し、息子を残して大佐の女と旅を続ける。最強のガンマンになるには倒すべき4人のガンマンがいると女にそそのかされ、4人を卑劣な手段で倒す。しかし、人殺しの無常を知ったエル・トポはフリークスたちと出会い、彼らの暮らす洞窟を解放しようと町に行ってフリークスの女と一緒に資金集めの芸をするのだが…。

 砂漠の殺戮の地獄絵図と聖性の対比。エル・トポとは神なのか。

 ミック・ジャガーやアンディ・ウォホール、ジョン・レノンが絶賛したカルト・ムービー。
 日本では寺山修司が目を留めた。

 よく観ると、修道院のベッドに肥満した体を埋めていた大佐が起き上がり、女の手助けで靴を履き、髪をなでつけ、化粧し、次第に山賊たちが恐れる「主人」に変貌していく様子は、まさしく寺山が「奴婢訓」で素っ裸の男を聖主人に仕立て上げていく「聖主人の作り方」とそっくり。その後に続く、手下たちに犬のマネをさせる場面も「奴婢訓」のワンシーンではないか。「奴婢訓」が「エル・トポ」から啓示を受けたのは明らかだ。

 ホドロフスキーはパントマイムにのめり込んで大学を中退したというが、フリークスたちと町の俗物たちに芸を見せるシーンでそのマイムが存分に生かされている。

セリフはほとんどなく、ドラッグ感覚の不条理映画。その後、映画に出た自分の子どもや孫を自分が老人になった時の映画に出演させ、子ども時代の自分を演じさせているのだから、虚実の境がない。

 もし、寺山さんに子どもや孫がいたら、寺山さんもまた彼らを映像という虚の中で自在に遊ばせ、実人生との境を限りなく失くしていっただろうか。

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