ミュージカル「ファザーファッカー」

 よくわからないまま観に行ったら、これがめちゃめちゃ面白かった。

 池袋・東京芸術劇場シアターイーストで行われた演劇系大学共同制作vol.7 ミュージカル「ファザーファッカー」(原作=内田春菊、演出=ペーター・ゲスナー)

 内田春菊の「ファザーファッカー」と「ダンシング・マザー」を基にしたミュージカル。
 出演者は東京演劇大学連盟(演大連)の学生たち。

 演大連は桜美林大学、玉川大学、多摩美術大学、日本大学、桐朋学園芸術短期大学の5校。

 毎年、持ち回りで共同製作してきたが、今年は桐朋学園芸術短期大学が主催。
 昨年は「わが町」とオーソドックスな演目だったが、今回の「ファザーファッカー」は1993年の刊行時に、その過激な内容が物議を醸した小説。
 養父による性的虐待から逃れるために16歳で家を出て、ホステス、クラブ歌手、ウェイトレスなどさまざまな職を転々としつつ東京で漫画家としてデビューを果たした内田の自伝的小説であり、それをミュージカルに、それも学生たちの舞台にするのは無謀とも思えるが、よくぞやってくれたと拍手したい。

 性的な場面が多くを占める物語であり、観客に居心地の悪さ、不快感を与えるものかもしれないが、愛知のトリエンナーレと同じような「表現の自由」に深く関わる問題であり、演劇の可能性にも踏み込んでいる。

 舞台は1970年代の長崎。中学生の静子は、ホステスとして働く母と妹と3人で貧しい暮らしを送っていた。実の父はDVであり愛人と出奔。
 その代わりに転がり込んだ男、たかしは籍を入れないまま同居。自分勝手な理想を押し付け、家族を支配する。
 ​義父による理不尽なパワハラと性的虐待。それを見て見ぬふりするばかりか積極的に娘を養父に差し出す実母・逸子。
 それでも常に成績は一番の静子。
 しかしクラスの同級生の子を宿してしまう。堕胎させるための養父の陰惨な仕打ち…。
 これでもかというくらい静子に陰惨な運命が待ち受ける。
 これをどうやってミュージカルにできるのか…と思うが、そこは手練れのペーター・ゲスナー。
 静子や母、養父など主要な登場人物をどんどん複製増殖させるのだ。場面が進行するにつれ静子は複数の女優が演じていく。スピーディーな展開とテンポのいい役者たちの「早替わり」。そして音楽がまたいい。
 主題の旋律はすぐにおぼえて頭の中をぐるぐる駆け巡る。

 演奏も音楽、照明も学生たち。
 一般的な舞台でもなかなか表現するのが難しい性的なシーンを嫌味なく明るく表現できるのはある意味、彼らがまだ学生だからだろうか。
 これから俳優として、表現者としての道を歩むであろう若者たちの「覚悟」を刻ませた演出家の贈り物でもある。
 いやー、すごい。手放しで褒めたい、素晴らしい舞台だった。
 
 見たのはB組千秋楽。
 将来、この出演者たちがどんな俳優、表現者になるか楽しみ。

 静子役=林香帆、大木美穂、永田莉子、一場楓華、松本青空。
逸子役=谷岡周、小口響郁、大江明日香、長谷川亜弓。
たかし役=温泉晴、新井凛太、石田勇輝。
知恵=下田あい。
志津男=大林拓郎。ミッシェル=大井基史。内科医=安藝晃。

 静子役では大木美穂、林香帆、永田莉子に10点。
 
 

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この記事へのコメント

2019年09月12日 13:31
久しぶりの更新、嬉しく思います。
このところ更新が滞っており、ご体調が悪いのかと心配しておりました。単に観たいお芝居がなかっただけなら良いのですが。
私が唯一楽しみに拝読しているブログです。これからも楽しみにしております。
2019年09月29日 18:31
ありがとうございます。