梁塵日記

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zoom RSS 青年劇場「郡上の立百姓」@紀伊國屋ホール

<<   作成日時 : 2016/09/18 20:05   >>

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紀伊國屋ホールで青年劇場「郡上の立百姓(たちびゃくしょう)」(作=こばやしひろし、演出=藤井ごう)

 伝統ある新劇の底力をまざまざと見せつけた重厚かつ清新な舞台だった。実にシャープな演出。こういう舞台大好き。

 舞台は宝暦四年(1754年)、美濃国(岐阜)郡上郡(ぐじょうごおり)。

 郡上藩に転封されてきた藩主・金森頼錦は財政困難の折り、年貢の取り立てを定免法(毎年決まった年貢米)から検見法(年々の収穫量に応じて年貢を決める)に切り替える。
 そのため、改めて検地を始める。隠し田や農道を切り開いた田畑など非公然の田畑が明らかになれば増税されるばかりか、厳罰が待っている。

 130カ村数千人の百姓たちが立ち上がる。
 唐傘に連判状を書き、郡上藩に検見取り反対と、16カ条の願書を提出、いわゆる強訴する
 百姓たちの激しい抵抗運動に、藩はいったん願いを聞き入れるが、一年後、庄屋衆の切り崩しから反撃と弾圧を始める。若き指導者・定次郎(清原達之)らは百姓たちをまとめ、組織的なたたかいへと発展させてゆくが、次第に郡上内は藩に従う「寝百姓」と、あくまで抵抗を続ける「立百姓」に分裂、両者の対立は苛烈を極め、立百姓の代表はついには老中・酒井忠寄の江戸城登城の駕籠に訴状を掲げて突進する……。

 江戸三大一揆のひとつといわれる郡上一揆を題材にしたもので、作者・こばやしひろし氏が自ら主宰する劇団はぐるまに書き下ろし(1964年)、翌年には第2回訪中日本新劇団の合同公演として上演、その後劇団民藝にて全国巡演された作品。

 今回の青年劇場版は40人の役者が出演。スペクタクル性と娯楽性のある舞台ながら、故高瀬久男氏に師事した藤井ごうの演出は群衆の中の個の存在をくっきりと浮き立たせる。

 40人の登場人物のどれひとりとして舞台に埋没しない。名もない百姓一人ひとりの存在が見事に活写されるのだ。その誠実な演出が舞台にみなぎる。
 役者たちの役作りのリアリティ―がそれに応える。往々にして今どきの舞台で演じられる時代劇はナンチャッテ感が強い。
 それじゃ百姓に見えないだろう…と。
 しかし、この舞台は美術・衣裳からメイクまで凝りに凝っている。
 実際に頭のてっぺんを剃って月代(さかやき)にしている役者も何人かいる。くそリアリズムといわれようと、カツラだとやっぱり興覚めするもんね。

 260年前の物語ではあるが、今の時代と相通じるものがある。

 「一揆」は倒幕運動ではない。幕府への減免、陳情のようなもの。原発、憲法をめぐる官邸前国民運動も60年代の革命運動とは違う「請願」の面を持つ。
 この物語は、現代風にいえば農民のストライキの物語ともいえる。

 タイトルの「立百姓」とは、百姓の生活権を請願し、改善する運動における「自立派」を指す。対してスト破りともいうべき、藩への服従派は「寝百姓」といわれる。

 運動の途上で方針をめぐる分裂は必然。立百姓の中でも急進派と穏健派の軋轢が生まれる。
 「寝百姓」にもそれなりの事情があったりする。
 
 そう考えれば「一揆」の物語はにわかに現代性を帯びてくる。

 しかし、この時代に、庄屋を排除した農民らが中心となり、5年もの長きにわたり、千人規模の「農民コミューン」ともいうべき闘いをしたのは稀有な例だろう。

 直接江戸幕府に窮状を訴えた駕籠訴、目安箱に訴状を入れる箱訴を決行し、その結果、藩主・金森家は改易、老中ら幕府の要人らも処断されたわけで、一揆の闘いは無駄ではなかった。

 「デモなど有効性はない」と言う人もいるが、311から続く反原発デモは裁判官の心証に少なからぬ影響を与えただろうし、沖縄の非暴力の抵抗運動は全国に抵抗の輪を広げつつある。

 260年前の郡上百姓一揆という抵抗運動の帰結はひとつの示唆を与えてくれるのかもしれない。

 二幕、一揆の頭領のひとり、定次郎の妻(崎山直子)・子(太田梨香子)との別れのシーンに滂沱の涙。子役のうまさが際立つ。母(藤井美恵子)のために「夫婦別れし、弟(沼田朋樹)に後事を託す兄。こういった「家」事情は戦時中にもあった由。
 
 老婆を演じる85歳の小竹伊津子のたたずまいがまた素晴らしい。
 一揆の理論的指導者・四郎左衛門(島本真治)、立百姓・善衛門(吉村直)、弥十郎(杉本光弘)、庄屋・又左衛門(葛西和雄)らベテラン勢の安定した演技が舞台を引き締める。
 前谷村の農民で要となる庄作を演じた本城憲も鮮やかな印象を残す。

 対になったプロローグとエピローグの絶妙、郡上踊りをベースにした百姓踊りの振付も魅せること。

 そして何より、胸に迫るラストシーンの見事さ。

 高齢者が多い新劇の観客のダメなのは、ラストシーンをせっかちな拍手で半分台無しにしてしまうこと。
なぜ新劇の客はあんなには拍手がせっかちなのか。
 あと30秒、いや1分待ってくれよ、と言いたくなる。

 特に今回のラストシーンはもう少し舞台の余韻を味わってもらいたい。画竜点睛を欠くのは観客の早い拍手。いくら年寄りは気が短いっていっても…。
 
 写真は終演後の飲み会。演出の藤井ごうさん。11月に東演『琉球の風」で演出の松本祐子さんとタッグを組む中津留章仁さん。中津留作演出の最新作は28日から紀伊國屋サザンシアターで上演される劇団民藝「箆棒」。

21時まで。22時半帰宅。
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