梁塵日記

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zoom RSS 劇団俳優座LABO公演「転がる石に苔むさず」

<<   作成日時 : 2017/08/02 01:16   >>

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 11:30、水道橋。梨の木舎。Y氏と待ち合わせ。初対面の挨拶。大MAGROCKにも来たことがあるとのことで、話が盛り上がる。60年安保世代。リベラルな方。今後の展開をご相談。


14時、六本木。

 もう、途中から最後まで頬が緩みっぱなし。こんなに幸福感に包まれた笑いを劇場で体験するのは絶えて久しい。

劇団俳優座LABO公演「転がる石に苔むさず」のこと。

「LABO」公演らしく実験的な試みではあるが、その徹底して不条理な笑いは実験性というより普遍的。よくぞこの企画を通してくれた。このところストイックな作品が続いた俳優座だが、この弾けっぷりは素晴らしいのひとこと。

 舞台は海が見える、ある町の高台。そこから見える風景が描かれた幕が舞台手前に垂れ下がっている。

 その幕の前に高校生の男女がやってくる。男子生徒(芦田崇)は受験勉強のためにこの場所を選んだということで勉強机を置いて教科書を開く。女子生徒(後藤佑里奈)はハナから勉強する気がない。なぜこの高台に来たの理由が「見晴らしがいいから」か「静かだから」かでもめる2人。

「そんなに静かなところに重点を置くなら地下牢で勉強したらいいじゃない」と女子。「どうして悪いことしてないのに地下牢に閉じ込められなくちゃいけないんだよ」と不満の男子。
「だって静かなところがいいんでしょう」
「地下牢は静かじゃない。他の囚人のうめき声も聞こえるし、ネズミも出る。足には鉄の球が繋がってるから動くたびにジャラジャラいう」
「別に囚人になれって言ってるんじゃないわよ…」

堂々巡りの会話。

 実はこの二人の会話から始まったものだから、「おいおい、この芝居どうなるんだよ」などと心の中で一瞬、外れか…と思ったのだが、よく聞いてると、二人の会話のテンポ、間、そして不条理な中身。これすべて作者の用意周到な言葉の応酬。計算されつくしている。

 次の場面から、もう頬がゆるみっぱなし。最後まで声を出して笑い続けてしまった。

 二人の前に男(島英臣)が登場。彼は街を徘徊する義父(可知靖之)を探しに来たのだが、義父はなぜか見知らぬ若者からもらったというエレキベースを手にしてたどたどしく弦を弾いている。

 このベース音は実際に可知氏が弾いているのだが、ベース音だけでこんなに効果を上げられるのかというくらい、雰囲気が出ている。

 さあ、勉強に集中できない高校生。場所を移動しようとするが、幕の裏では今度は金属音。どうやらもう一人、老人が加わったようで、彼が叩くのはドラム缶。チャーリーと名乗る老人(遠藤剛)は義父を「ビル」と呼び始める。ドラムスがチャーリーでベースがビル。…ローリングストーンズのチャーリー・ワッツとビル・ワイマン。そうなれば、この後登場してくるのは、ミックにキース…? 義理の息子にドラムスセットを買ってくれ、ライブをやりたいと迫る義父。
 この話、この後、どう転がっていくのか。

 作・演出の平塚直隆は名古屋で演劇ユニット「オイスターズ」を主宰し、数々の戯曲賞を受賞している新進気鋭の劇作家。老舗劇団への書下ろしというプレッシャーを微塵も感じさせない弾けっぷりに大物感が漂う。

 男子高校生による幕の上げ下げの度に老人たちの変貌ぶりが進行していくという演出がたまらなく可笑しい。
 しかも、予定調和とならないのだ。

 観る人の想像をあざ笑うかのように次々と予想を裏切っていく。その不条理な脚本は天才的。
 タイトルが「ローリングストーンズ」からきていることが徐々にわかるも、その帰結はまったく想像できない。

 老人たちの怪演ぶりがすごい。
 
 バンドメンバーは劇団の古参俳優たち。可知83歳、遠藤79歳。最年少の青山眉子で72歳、最年長の中村たつは89歳。登場人物は実年齢の設定。すべて当て書き。
 可知と遠藤のやり取りが絶妙。老人たちと対照的な高校生二人もとぼけた味で絶好のコンビ。

男の妻役の斉藤深雪がまたいい味。影絵という意表をつく登場の仕方がにくい。笑いのセンスも抜群で、夫を翻弄する手綱さばきが見事。謎の髭の若者・深津健介がまたしゃれたキャラ。おいおい、そこで「ジャンピングジャックフラッシュ」につながるのかよというシーンは劇中の見せ場。
 ご高齢の俳優陣、ときどき、セリフがぼつかなくなる場面もあるが、それはご愛敬。一瞬固まっても芝居の面白さに影響はない。若者と老人の間で右往左往する夫を演じた島英臣の情けないコメディアンぶりがまた笑いを誘う。

 この作品、もうめちゃめちゃ大好き。摩訶不思議なセリフ、展開のテンポ、間、リズム。不条理コメディーというとイメージが固定してしまうので何といえばいいか。私の笑いのツボにぴったりはまった超喜劇。

 俳優座は大きな冒険をしたと思うが、その冒険の成果はお釣りが来るくらい。
 作者の平塚氏のことはよく知らなかったので、終演後、iPhoneで検索して顔を特定。客出しをしていたのがその人だとわかったので声をかけてしまった。こんなことはまずしないのだけど。どんな人かと興味を持ったわけで。

「いやー、面白かった」と感想を述べて少し立ち話。あとで調べたらプロジェクト・ナビで役者をしていた方なのだ。しかも、ジャブジャブサーキットのはせひろいち氏に師事したとのこと。おお、そうだったのか。
 名古屋という地域は異色の演劇人を輩出する。
これは今後の平塚直隆を注目しなければ。色んな賞を受賞しているが、今まで知らなかったのは自分の不覚。

 8日まで、六本木・俳優座5階稽古場。これは圧倒的におすすめ。1時間30分。
http://www.amazon.co.jp/%E5%AF%BA%E5%B1%B1%E4%BF%AE%E5%8F%B8%E3%81%AB%E6%84%9B%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%9F%E5%A5%B3%E5%84%AA-%E6%BC%94%E5%8A%87%E5%AE%9F%E9%A8%93%E5%AE%A4%E2%97%8E%E5%A4%A9%E4%BA%95%E6%A3%A7%E6%95%B7%E3%81%AE%E5%90%8D%E8%8F%AF%E3%83%BB%E6%96%B0%E9%AB%98%E3%81%91%E3%81%84%E5%AD%90%E4%BC%9D-%E5%B1%B1%E7%94%B0-%E5%8B%9D%E4%BB%81/dp/4309272169/ref=gfix-ews-form

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