梁塵日記

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zoom RSS 日本劇団協議会主催「SCRAP」/劇団NLT「劇場の異邦人」「坊やに下剤を」

<<   作成日時 : 2017/07/07 18:43   >>

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 14時、池袋、シアターグリーンBOXinBOXで劇団NLT公演「コメディア・ラ・モード」は「劇場の異邦人」(演出=川端槇二)、「坊やに下剤を」(演出=木村有里)の二本立て。

 前者はアンドレ・ルッサンが書いた「世界中、どこでも翻訳なしに上演できる作品」。

 前口上と最後に「共犯者」(川ア敬一郎)により芝居の中身が説明されるが、あとは意味のない言葉での会話。「いろは」や「あいうえお」の一部のように意味から外れた文字の羅列で会話が進行する。たまに意味のありげなフレーズも混入させるから客席が爆笑の渦。

 言葉の通じない「異邦人」たちの演劇的会話の妙。
 父(藤波大)と母(杉山美穂子)の息子(左良拓司)と娘(宮本亜美)、娘のフィアンセ(西健太)が織りなす愛と嫉妬の物語。メイド=樋ノ口美優。
 今回が30数年ぶりの上演とか。父親役の藤波の飄々とした芝居がおかしみを誘う。

 後者はジョルジュ・フェドー作。
 陶器製の「おまる」を軍に売り込むことで頭がいっぱいの夫フォラヴォワーヌ(桑原一明)と、息子トト(遠藤香菜美)の便秘を治すための下剤で頭がいっぱいの妻ジュリイ(山崎未花)。そこに、妻(関根七瀬)が他の男トゥルシェ(松岡翔)と浮気をしていると噂がある取引相手シュイユー(山田敦彦)が現れる。割れないはずの「おまる」は割れ、トトのイタズラで下剤は思わぬ人に効果を発揮する…。メイド=萩原万里子。
 混乱に次ぐ混乱のドタバタコメディー。
 ジュリイ役の山崎が魅力的。
 コメディーは難しい。バカバカしいことをバカバカしくやってたらつまらない。バカバカしいことを真剣にやらないと笑いの共感が生まれない。泣かせるより笑わせる方が数段難しいのだ。「劇場の異邦人」を初演した賀原夏子さんらは大変な冒険だったに違いない。終演後、川端さんに劇中言語みたいについ「おもよろを おもよろを」と話しかけてしまった。30分+15分+60分=1時間45分。


 高田馬場に移動し時間つぶし。芳林堂で2冊。昨日、元TBSのプロデューサー橋本隆さんとラジオのことを話していて、橋本さんがギャラクシー選奨の審査員を務めていた時に最も印象に残った作品が北阪昌人の「プラットホーム」という作品だと聞いたばかり。東北放送だから聴いていない。その北阪氏の本があったので立ち読みしたら巻末に「プラットホーム」の脚本が載っているではないか。おお、シンクロニシティ!
 近大で2005年〜06年に行われた連続講座を活字にした「唐十郎 特別講義」。これで原稿料の図書カードは使い果たす。

 早稲田の構内に行き、法学部の学館ラウンジで涼みがてら読書。こぎれいでチリ一つ落ちていない。トイレはウォシュレット。落書きなどあるはずがない。
 
「唐十郎 特別講義」を読むと、青年・唐十郎が三好十郎に傾倒していたことに言及している。西堂行人に唐十郎の名前の由来を問われ、「藤十郎の恋もそうだが、三好十郎の十郎もその一つかもしれない」と答えている。一番好きな戯曲が「その人を知らず」で、中でも敬虔なクリスチャンからダンサー、娼婦と堕ちていく治子に惹かれるのだと。
三好十郎はある意味アングラの源流か。

18時過ぎにSPACE早稲田そばの喫茶店に移動。コーヒー&モンブラン。

19時半、日本劇団協議会主催「SCRAP」。

 福田善之1964年の作品「袴垂れはどこだ」は圧政に苦しむ寒村の村人たちが幻の義賊「袴垂」を求めて、ニセの袴垂れ集団となり旅に出る物語だった。

 60年代アングラ小劇場に通底する、「ここではないどこか」を希求する若者たちの姿はシライケイタの前作「舞台版 実録・連合赤軍あさま山荘への道程」 の、理想の世界を求めながら破滅していく若者たちの姿と重なる。

 そして今、「SCRAP」は1950年代末に大阪城の東側一帯にあったアジア最大の軍事工場「大阪砲兵工廠(こうしょう)」跡地で屑鉄泥棒で生計を立てる通称アパッチ族の若者たちを描いたもの。彼らのほとんどは在日朝鮮人。戦後、疲弊した日本経済が立ち直るきっかけになったのが1950年に勃発した朝鮮戦争で鉄、金属が高騰したこと。同じ民族間の戦争による経済恩恵で息をつくという不条理を在日朝鮮人たちは味わった。

 開高健「日本三文オペラ」、小松左京「日本アパッチ族」などの小説で取り上げられたことで「アパッチ族」の名前は一般的になった。舞台では坂手洋二作・金守珍演出の「東京アパッチ族」が90年代末に上演された。

 今回は、アパッチ族の出自と設定する「韓国・済州島四・三事件」が芝居のモチーフとなっている。

 戦後、アメリカ陸軍司令部軍政庁支配下にある韓国の済州島で自主独立を目指した島民の蜂起に対する大弾圧。国防警備隊、韓国軍、警察、右翼青年団などが女子供含む島民30万人のうち6万人を虐殺した事件だ。
 戦争が終わり、民族の独立を果たしても、米ソ東西陣営の軍事的駒として引き裂かれた南北朝鮮。
 南では虐殺、一方で、「地上の楽園」といわれた「共和国」への帰還運動の結末の痛ましさ。

 シライケイタ(役者としても出演)は「あさま山荘」と同じく、「理想」を求めながらも裏切られていく若者たちの悲痛な叫びに主眼を置いている。

 四方を客席が取り囲む狭いスペースを使い、猥雑でエネルギッシュなアパッチ族たちの跳梁と内省的な「静」の場を描き分ける日澤雄介の切れのいい演出が光る。

 月船さららが胸の奥に哀しみを秘めた「パイコ」をいつにもまして艶っぽく演じ、景品買いの清水直子は気のいい在日のおばさんを、ホンミョンファ(洪明花)は、気風のいい姐御肌の妻を、佐原由美は言葉を失くした儚げな少女を、それぞれ濃密に演じた。

 男優陣がまた素晴らしい。
 アパッチたちを統べる「組長」栗原茂の重厚篤実な芝居、アパッチの頭脳ともいえる「ハカセ」シライケイタの軽妙な芝居、舞台の要であり、唯一の日本人で彼らに溶け込んでいく「ヒノマル」西條義将(在日が彼につけたヒノマルという愛称は、戦時中の陰惨な記憶に結びつくだろうから、この愛称にはちょっと違和感あるが)が舞台を引き締める。障がいがあるゆえ、お荷物になることを拒む「カカシ」上田和弘の哀しみ、何かにつけハカセと角突き合わせる肉体派「ブル」イワヲ、舌先で鉱脈を嗅ぎ当てる「グルメ」里美和彦、遠い世界を夢見る「トオル」木暮拓矢、逃げ足の速さはピカイチの「トンチ」伊原農。
 イワヲの目の演技がいい。いろんな役どころを観てきたが、今回の芝居は役者として実に魅力的。

「あったことをなかったことにしてはいけない」というのが、この作品の底流にある主旋律だろう。
生きることは食うこと。食うことに人間の「生」のダイナミズムを象徴させる冒頭の徹底した演出が面白い。ロマンチシズムとリアリズムが切り結ぶシライ戯曲の新展開。2時間ノンストップ。息つく暇もないエンターテイメントに仕上がっている。ただ、現代の視点が勝ちすぎてる箇所が気になった。17日まで。

終演後、白井、流山児、月船さんらと歓談。23時30分帰宅。
http://www.amazon.co.jp/%E5%AF%BA%E5%B1%B1%E4%BF%AE%E5%8F%B8%E3%81%AB%E6%84%9B%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%9F%E5%A5%B3%E5%84%AA-%E6%BC%94%E5%8A%87%E5%AE%9F%E9%A8%93%E5%AE%A4%E2%97%8E%E5%A4%A9%E4%BA%95%E6%A3%A7%E6%95%B7%E3%81%AE%E5%90%8D%E8%8F%AF%E3%83%BB%E6%96%B0%E9%AB%98%E3%81%91%E3%81%84%E5%AD%90%E4%BC%9D-%E5%B1%B1%E7%94%B0-%E5%8B%9D%E4%BB%81/dp/4309272169/ref=gfix-ews-form

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