梁塵日記

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zoom RSS みすてられた島

<<   作成日時 : 2014/05/10 18:08   >>

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 4時半まで会社。
夏物ジャケットを欲しかったが、TAKA−Qを覗くも適当なものがない。財布もさびしいし。

 18時30分。紀伊國屋サザンシアターで青年劇場「みすてられた島」(作・演出=中津留章仁)。


 中津留章仁の作品はそんなに観ていなくて、評判の高い「背水の孤島」や「極東の地、西の果て」もつい先日の「虚像の礎」も見逃した。
「来訪者」や「欺瞞と戯言」を観たときは、その「大映テレビドラマ」調の大仰な物語展開に、これが評判の作家の作品なの? と正直言って肩透かしを食ったものだし、「完全姉妹」に至ってはもう……。
 大状況を描くことにかけては並々ならぬ才能があるし、いまどきのちまちました演劇とはまったく異なる「風格」には好感が持てたが、さて青年劇場との相性は?

 ……などと多少の懸念があったが、これがナント、第一打席の初球をいきなり場外に運ぶ豪快なホームラン。久しぶりに観終わって心地よい興奮に包まれた。ヒットか空振りかのどっちか。どっちにしても豪快なバッターである中津留章仁の才能に心から感服する。


 物語の基になっているのは、日本の敗戦5カ月後にGHQがポツダム宣言第8条の「日本国の主権は本州、北海道、九州ならびに我らの決定する諸小島に局限せらるべし」の規定を適用し、「琉球」「小笠原」と並んで伊豆諸島を「政治的に分離」しようとした史実による。
 つまり、伊豆諸島は日本からの独立を命じられたのだ。実際には2カ月後に指令解除され、伊豆諸島は日本からの分離を免れたのだが、小笠原は68年まで返還されなかったし、沖縄が返還されたのは72年だ。

 この分離独立騒ぎの渦中、伊豆諸島の大島では「大島憲法」制定の動きがあった。いわゆる「大島憲章」、幻の独立共和国暫定憲法だ。

 物語は近未来。「日本」のとある島。国連の調停により、隣りの大国の間に停戦が成立、戦争が終わり、「戦後」が始まる。
 しかし、島は「手続き上のミス」から日本から分離されることになる。「本土」から棄てられた島はこれからどうなるのか。島長の児島大作(吉田直)の家に議員で魚加工会社の社長・鳴海(広戸聡)、議員の春日(葛西和雄)、漁協組合長の島村(大木章)、元新聞記者でフェミニズム運動の貞升恵美(湯本弘美)、元教師の磯辺栄(島本真治)らが集まり、新憲法の草案を練ることになる。
 一方で、児島家の長男・国彦(清原達之)が交際を隠している島外から移住しいてきたゆかり(大山秋)には秘密があるらしい。長女・範子(大月ひろ美)は母・泰江(藤木久美子)から漁師の船江亮(岡山豊明)との結婚を反対されている。「戦争が終わって、漁ができるようになっても漁師という不安定な仕事の人に娘を嫁がせるわけにはいかない」と。
 島村の離婚した妻・千佳(松永亜規子)は島本との再婚を考えているが、息子は本土の高校への進学を希望している。
 島の独立に伴う、憲法草案のカンカンガクガク、そこで暮らす人々の交差する人間模様。

 島の人の幸福のための憲法草案という大状況と、人々の生活と人生の哀歓という小状況が重なり合い、演劇的感興この上ない見事な舞台。
 不戦の誓いについて島民がどう判断したかは見てのお楽しみ。憲法論議だけがこの芝居の要ではないにしても、芝居を見ながら「独立」するということはどういうことなのか、観客席でシミュレーションしている自分に気づく。島の人口が流出したら島の経済はどうなるのか(これは福島の原発事故後の自治体と重なる)。病院、介護施設などの福利厚生のためにいかに税収入を増やすか。本土との関係をどうするのか。島民の生活水準は。
 よく、「日本の真の独立」を夢想するが、小さな島の独立劇を見ていると、なるほど国が「独立」するというのは希望とともにさまざまな困難が立ちふさがるのだなと、皮膚感覚でわかる。

 休憩15分を挟み3時間だが、まったく飽きさせない。固いディスカッション劇と勘違いする人もいるかもしれないが、これは笑いの横溢する人間喜劇なのだ。

やがて、この島の問題は沖縄と重なっていく。明らかになる冷酷な国家の意思。
 極上のミステリーが謎解きの最後の1ピースも残さずピタリと収まるように、この芝居も3時間の人間ドラマが最後に見事なまでにひとつに収斂する。

 ラストシーンに思わず落涙。しかし、これは希望の涙だ。並びの席の文化座・佐々木愛さんも涙をぬぐっていた。

 論議の中でもめていた島の「憲法9条」はどうなったか。それは芝居を観てほしい。
 ただひとつ言えるのは、憲法とは国民の不断の努力によって憲法となる。
 平和の理念もまた人を信じることでしか達成できないということ。

 パンフで中津留氏がこう書いていた。
「我々を守ってくれるものは何か。それは結局、あなたの側にいる人達ではないだろうか。我々人間同士なのではないだろうか。そのことを今一度、皆様と、自分自身に問う」

 客席はまだ空席が目立つが、これは中津留演劇とリアリズム演劇の青年劇場の幸福な最上のコラボレーション。見逃したら一生の損だよ。
 
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